めまいはどうして起こるのでしょうか?
人間は自分の周囲の空間や位置を目・内耳(平衡感覚にとって大切な三半規管や前庭は内耳に存在します)・手足の関節などで感知し、その情報を脳に伝え、脳で統合し、微妙な体のバランス(平衡覚)をコントロールしています。この仕組みのどこかの具合が悪くなると平衡バランスが崩れ、めまいとして感じられることになるわけです。
めまいを起こす疾患には、下記のようにいろいろなものが知られています。
めまいを起こす疾患
良性発作性頭位めまい症
耳鼻科を「めまい」で受診なさる患者様で一番多くみられる疾患で、特定の頭の位置の変化(例えば寝返りを打った時、頭を洗うために下を向いた時、ベッドから起き上がった時など)により出現するめまいです。ぐるぐる目が回る感覚が強いため、恐怖感や不安感、吐き気を伴ったりしますが、聴覚トラブルはありません。
耳を原因とするめまいのなかで最も発症数が多いものの、比較的治りやすい疾患です。
内耳にある耳石器(頭や体の傾き具合を感知する器官)から耳石(炭酸カルシウムの結晶から成る組織)が剥がれ、三半規管の中に入り込むことによって発症すると考えられています。
メニエール病
メニエール病は、めまいを起こす疾患の代表であり、特徴的な症状を呈します。めまいの発作時に片側の耳鳴り、耳閉感、難聴が一緒に起こり、めまいが消える頃には、それらの症状も軽快・消失します。厄介なことに、この病気は発作を繰り返し、やがて耳鳴りや高度の難聴が残ることがあります。発作の無い時は、無症状となります。
内リンパ水腫といって、内耳における内リンパ液圧の上昇が原因と言われています。
前庭神経炎
突発的に、周囲がぐるぐるまわるような激しい回転性のめまいが起こり、それが1週間くらい続きます。吐き気や嘔吐を伴います。
発症する数日~2週間前に、風邪などの上気道の感染症にかかっていることが多く、風邪ウイルスによる前庭神経(平衡感覚を司る神経)の炎症が原因とも言われていますが、詳しい原因は解明されていません。
突発性難聴
メニエール病によく似ていますが、発作がただの1回であることや、めまいが治まっても耳鳴りや難聴が残ってしまう点が異なります。
この病気の原因は「聞こえ」を司る神経へのウイルス感染とか、内耳の血管の血栓(血のかたまり)などが考えられています。
メニエール病と同様、両方の耳に発症することは稀です。早く治療を開始すれば聴力が回復する可能性が高いので、とにかく早期に治療することが大切です。
慢性中耳炎
慢性中耳炎が内耳にまで及ぶと内耳炎を併発し、めまいを引き起こします。
聴神経腫瘍
片側の耳鳴り、難聴が徐々に悪化し、ふらつき、頭痛、顔が曲がるなどして(顔面神経麻痺)、初めて診断されるケースが多く見受けられます。
精密な聴力検査やめまい検査、耳のX線検査やCTスキャン、MRIを行うことによって診断がつきます。
脳循環障害(椎骨脳底動脈循環不全症)
脳の血流が不足して、めまいに関係する小脳、脳幹の機能が悪くなることによって起こります。めまいのほかに舌がもつれる、物が二重に見える、手足がしびれるなどの症状が生じることもあります。激しい頭痛や意識不明などの症状があれば、脳出血が疑われます。
※上記のほかに、脳腫瘍、頭部外傷、薬物による内耳障害、起立性調節障害、過呼吸症候群、心因などが原因となって起こるめまいもあります。
めまいの診断
めまいの診断の流れについて、簡略に触れておきます。
1.問診
患者様の訴え、お話を注意深く聞くことはたいへん重要であり、問診だけでほぼ診断がついてしまうようなケースも少なくありません。
下記のような内容について、できるだけ詳しくお聞かせください。
いつめまいが起こったか
上を向いた時、横になった時、歩いている時、など
どのようなめまいが起こったか
ぐるぐる回った、ふわふわした、など
どのように経過したか
数分で治まった、数日間もぐるぐる回った、など
めまいに伴った他の症状
耳鳴り、難聴、頭痛、体のしびれや麻痺、物が二重に見えた、など
2.検査
【聴覚検査】聴力(聞こえ)に関する専門的な検査です。
- 聴力検査
- 内耳機能検査
- 耳小骨筋反射
- 聴性誘発反応検査(ABR) など
【平衡機能検査】めまいに関する専門的な検査です。
- 立ち直り反射
- 遮眼書字検査
- 眼振検査
- 重心動揺検査
- 赤外線CCDカメラ下眼振(特殊な目の震え)検査
- 画像診断(X線などの検査) など
*CT、MRIが必要な場合は、連携医療機関に撮影を依頼します。
【めまいの原因を調べる検査】
- カロリックテスト(温度刺激検査)
片方ずつ、お湯または水を外耳道に送り込むことによる検査で、前庭から中枢にかけての平衡感覚機能を判定します。
めまいの治療
まず、めまいの誘発要因を取り除くことが必要となります。ストレス、過労、感冒、アレルギー体質、低血圧などがあります。
めまいの発作中は、しばらく安静にします。強い頭痛や意識の消失が無い限り、多くは命に別状が無いので、まずは慌てずに気を落ち着かせ、楽な姿勢をとりましょう。
めまいが治まったら、早めに専門医を受診してください。内服薬(抗めまい薬、循環改善薬、浸透圧利尿剤など)で発作の再発防止に努めます。
なお、治療にあたっては、必要に応じて脳神経外科や神経内科、整形外科、精神科などをご紹介するケースもあります。